オリンパスのボディE-P3に20mmのレンズを付けてあるイベントに参加してたときの話。買ったばかりのコンパクトカメラを手に自慢げに私に質問してきた。
「それ何倍ズーム?」
見ると、かなりの高倍率レンズを搭載するカメラを手にしている。いわゆるネオ一眼だ。以前私も一眼を買えないときやむを得ず使っていた事があった。選んで選び抜いた7.1倍ズーム付きのカメラは、そこそこ高い倍率の割にレンズ性能が極端に酷い訳ではなく、かなり妥協すればとても便利なものだった。AF性能、CPU、レンズの妥協点を取ることに成功した。
しかし、 当たり前だがフレアはてんこ盛り、焦点距離によっては解像しない、何よりボケない(背景をぼかせない)など不満は出る。フルサイズ機が安くなるまで待とうと考えていた私も、我慢の限度に達してしまい、一眼を買うことになる。
そんなことを思い出していたが、ネオ一眼を誇らしげに持っていたその人はたたみかける。
「光学で20倍あるんだよ。凄いでしょ?それはもっとある?」
と聞いてきたので、私も素直に答える。
「1倍!」
「1倍?そうなの?」
どうやら拍子抜けしたようだ。恐らく3倍とか5倍という答えを期待したのだろう。彼は他の疑問へ移行したのが見て取れる。恐らく、
「写真通のこの人がなんで1倍を使用しているのだろう?」
これは今回に限ったことではない。大半の人がスペックに騙されているであろう会話は幾度となく耳にしている。
1/2.5インチというCCDサイズに2400万画素
何から比べてなのか分からずに20倍ズーム
等など。数字が大きければ性能が良いという勘違いをメーカー側が狙っている。
初心者には小さいカメラがよく売れる。しかし小さいゆえに、CCDあるいはCMOSは必然的に小さくなる。そのセンサーサイズにはあまり触れず、画素数を強調すれば売れるのだ。更に差別化を果たすために、20倍ズーム搭載を強調する。そこには、
〃大きなセンサーに〇〇万画素〃とか、〃ローパスフィルターレスの〇〇万画素〃とか、〃広角域24mmからの高倍率〇〇〃とか、〃MTF曲線で〇〇〃といった本来の性能はない。
冒頭の彼もそれに踊らされ、センサーサイズも分からず、20倍ズームと言えば20倍性能が良いと思い込み、買ったのだ。
細かい説明は面倒だし何より買ったばかりのカメラにケチをつけられたら嫌だろうから、その場は適当に茶を濁したが、それでも彼の?マークは頭の上を飛んでいた。